はじめに
「背が高い人は長生き」「いやむしろ早死にしがち」――どちらも耳にしたことのある噂ではないでしょうか? 一般的に高身長は健康やスタイルの良さの象徴とされがちですが、「実は高身長の人ほど短命である」という研究報告も近年増えてきました。
本記事では、世界中の疫学調査や生物学的な研究を総合し、**「本当に背が高いと寿命が短くなるのか?」**についてわかりやすく解説します。さらに、身長と死亡率の関係を追った海外の大規模研究や日本人向けの調査データから見えてきた事実、そして「じゃあ背が高い人はどうすればいいの?」という疑問にもお答えします。
結論を先にお伝えすると、「身長と寿命の関係は時代・地域・集団によって異なり、一概には言えない」というのが現代の科学的スタンス。ただし、高身長ゆえのリスクや低身長ゆえのメリットらしきものも確かに存在します。興味がある方はぜひ最後まで読んでみてください。
背が高い人ほど死亡率が高い? 研究が示すさまざまな結果
さっそく、世界各地で行われた身長と寿命(死亡率)の大規模研究をざっくり見てみましょう。実は、
• 「背が高いほど死亡リスクが低い」
• 「背が高いほど死亡リスクが高い」
この両方の結果が報告されているんです。
1. イギリス・スコットランドのコホート研究
1970年代~1990年代の追跡調査では、高身長な人ほど心臓病や脳卒中、呼吸器疾患による死亡率が低いことがわかりました。栄養状態や社会経済的地位を調整してもその傾向は変わらず、「高身長=肺機能が良好」という点が循環器リスクを下げていると考えられています。
一方で、がんについては「背が高い人ほどリスクが高い」という結果が同時に報告されました。
2. サマラスら(1990年代~2000年代)
「小柄な人ほど長生きする」という主張を長年行ってきた研究者が、トーマス・サマラス氏。1990年代のWHO機関誌や2002年の総説でも、
• 背が高い=健康というイメージは過大評価
• 実際は低身長でも長生きする人が多い
とアピールしました。
さらにアメリカの大規模調査(NHANES I)では、「身長と心臓病死亡に明確な関連はなかった」という結果も出ています。
3. アスリートの死亡データ
スポーツ選手は体格が大柄なイメージがありますよね。そこで、元プロ選手を追跡して寿命を調べた研究も多数存在します。たとえばフィンランドのアスリートでは「身長1cmごとに寿命が0.5年短い」という衝撃的な数字が示されましたし、アメリカの大リーグ野球選手やNFLフットボール選手でも同様の傾向が指摘されています。
一方、バスケットボールNBA選手については「身長との関連は見られない」という報告と「高身長の選手ほど80~90歳代で早世する」という報告の両方があり、ここでも結果は分かれています。
4. ハワイ在住の日系人男性の研究
2014年に発表された、ハワイの日系男性8,000人以上を40年間追跡した超ロングスパンの研究では、**「低身長のほうが長生き」**という明確な傾向が確認されました。最も低身長なグループが平均2年ほど長生きだったという結果で、話題になりました。さらに長寿遺伝子として知られる「FOXO3」との関連性も示されています。
5. アメリカ一般成人の分析(2016年)
米国の全国健康インタビュー調査データによる解析でも、「背が高いと全死亡リスクが増加する」と報告されました。特にがんによる死亡率が上がるのが主な理由らしく、
1インチ(約2.54cm)高くなるごとに男性は2.2%、女性は2.5%全死亡リスクが上昇
という結果。一方、心臓病や感染症などは現代の医療技術の進歩でコントロールしやすくなったため、がんリスクの影響が際立つようになったと考えられています。
6. ポーランド人口の大規模研究(84万人分)
こちらは「男性・女性ともに背が高いほど寿命が短い」という一見逆相関のデータが出たものの、実は年代による平均身長の違い(若い世代ほど背が高い)を補正すると、その関連は大幅に弱まったとのこと。「高身長が不利とも有利とも断定できない」という結論が出されています。
じゃあ結局、背が高いと寿命には不利なの?
ここまで見たとおり、研究結果は必ずしも一方向にまとまりません。国や時代、集団の特性、さらには研究手法によっても結論が変わります。
• 衛生環境が悪かった時代や地域
• 「幼少期の栄養不良 → 低身長 → 体が弱い → 早死に」となりやすい
• つまり高身長=長生きの傾向が見られやすい
• 医療が充実した現代先進国
• 心臓病や感染症が克服され、残る主な死因が「がん」
• がんは「身長が高いほどリスクが高まる」傾向あり
• 結果、高身長=寿命が短くなる傾向が見えやすい
要するに、「高身長=短命」という構図は現代先進国でがんリスクが浮上したがゆえに注目されている、という見方ができます。
高身長にどんなリスクが? 考えられるメカニズム
なぜ背が高いと寿命が不利になる可能性があるのでしょう? 主に挙げられる説は以下のとおりです。
1. がんリスクが上がる
• 大きな体は細胞の数が多く、分裂回数も増える。
• 変異細胞(がん細胞)が発生するチャンスも増える。
• さらに成長ホルモン(GH)やIGF-1が高めの人ほど、老化が進む傾向が動物実験などで示されている。
2. 代謝負荷が大きい
• 背が高い=体が大きいほど、維持するエネルギーが必要。
• 活性酸素や老廃物の蓄積も多くなる。
• いわゆる「大きな体を回すコスト」が老化を早めるという考え方。
3. 遺伝的素因
• 「小柄で長生き」の遺伝子を持つ家系や「高身長だががんリスクも高い」家系などがあり、個人差が大きい。
• FOXO3遺伝子の長寿型を持つ人は身長が低めである一方、がん・糖尿病にかかりにくいとの報告がある。
高身長でも得られるメリットは?
一方、「高身長は良いことばかり」というイメージも完全には否定されません。例えば、
• 心血管疾患リスクの低下
• 高身長の人は肺活量が大きい→循環器系の負担が小さめ?
• 血圧やコレステロールがやや低い傾向が報告されている研究もある。
• 骨格が頑丈・骨粗鬆症リスクが低い
• ある程度大柄だと骨折しにくいとの指摘も。
• QOL(生活の質)の面
• スポーツや日常生活での活動が快適な場合が多く、視野や手足の長さのメリットもある。
このように、高身長ももちろんメリットがあります。だからこそ、「一概に背が高い方が健康に不利」とは限らない、という点が強調されます。
「身長が高い=必ず早死に」ではない理由
研究の結果や生物学的メカニズムを踏まえると、「確かに高身長が不利な面もあるかもしれない」が、以下のような見方も大事です。
1. 交絡因子が多い
• 幼少期の栄養状態や生活習慣、社会経済的背景が身長にも寿命にも影響する。
• “背が高い”という表面的な特徴よりも、その背後にある環境要因のほうが大きく影響している可能性がある。
2. 統計上の差は意外と小さい
• 「1インチ高いと死亡リスクが2~3%上がる」と言っても、個人差を覆すほどの大きな数字ではない。
• 最終的には遺伝や生活習慣、健康管理がものを言う。
3. 健康的な生活習慣次第でカバーできる
• 「小柄だと得」「大柄だと損」で終わらず、喫煙や食事、運動、定期検診などライフスタイルのほうが大切。
• 高身長でも正しくケアすればリスクを抑えられるし、低身長でも不摂生すればがんや心疾患のリスクは高まる。
まとめ:背が高い・低い、それ以上に大切なこと
「背が高い人は早く亡くなるのか?」という説をめぐって、多種多様な研究結果とメカニズムを見てきました。主にがんリスクの観点で、「高身長だと早死にしやすい」という結果が少なくないのも事実です。ですが、一概に「背が高ければ絶対短命」とは言い切れません。
過去には感染症や心臓病が主な死因だった時代に「高身長=強い・健康的」という図式があったように、現代でも医療がさらに進化すれば図式がまた変わるかもしれません。実際、寿命を左右するのはライフスタイルや遺伝、社会環境、医療の進歩など、ほんとうに多くの要素が絡むからです。
最後に大切なポイント
• 背の高さは大きく変えられない要素。
• それを嘆くより、自分のリスクを把握して健康的な生活を送ることが肝心。
• 「身体が小さいから有利」「大きいから不利」という単純な話ではない。
「大は小を兼ねる」という言葉はよく耳にしますが、「小さな体にもメリットがある」という視点があるのも面白いですよね。背が高かろうと低かろうと、自分の体を知って、リスクを上手にコントロールする――これが長寿の最大のカギと言えそうです。
参考文献・関連研究
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いかがでしたか?
「身長が高い人はみんな早死にする」という極端な話では決してありません。ただし、統計データ上、がんリスクが上がる傾向があることは確かなようです。どんな身長でも、日常生活の心がけでリスクはいくらでも下げられます。結局、自分の体質や生活習慣を見直すことこそが長寿の鍵ですね!
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