こんにちは。今回は、産業翻訳の現場でよく使われるCAT(Computer-Assisted Translation)ツールを比較しながら、それぞれの特徴やおすすめポイントをまとめてみました。翻訳者の仕事を効率化し、品質を向上させるCATツールですが、種類が多い分「どれを選べばいいか分からない」という方も多いですよね。
この記事では、価格・機能・使いやすさ・対応OS・チームでの共同作業(コラボレーション)などの観点から、主要なCATツールを一挙に解説していきます。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. そもそもCATツールって何?
CATツールとは「Computer-Assisted Translation(コンピュータ支援翻訳)」の略で、翻訳者が効率的かつ正確に翻訳できるよう手助けしてくれるソフトウェアです。具体的なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 翻訳メモリ(TM)による再利用
過去に翻訳した文章を蓄積し、類似文が出てきたときに再提案してくれます。 - 用語集(TB)による訳語の一貫性確保
専門用語や定訳を登録しておけば、訳抜けや誤表記を減らすことができます。 - 機械翻訳(MT)連携でスピードアップ
API連携による機械翻訳結果を参照しながら作業でき、効率化が図れます。 - ファイル形式対応が豊富
WordやExcelだけでなく、HTML、InDesign、XLIFFなど多彩なフォーマットを直接処理可能。 - コラボレーション機能
チームメンバーやクライアントとの共同作業がスムーズになります。
産業翻訳では大量のテキストを扱うことが多いため、こうした支援機能があるかないかで、作業効率と仕上がり品質に大きな違いが出てきます。
2. 主要CATツールの比較表
まずは、代表的な6種類のCATツールをざっくり表でまとめました。あなたのニーズに合いそうなものを探してみてください。
ツール名 | 価格モデル & ライセンス | 主な機能・対応ファイル形式 | 使いやすさ(UI/学習コスト) | 対応OS | チーム共同作業機能 |
---|---|---|---|---|---|
Trados Studio | – 買い切り 約11万円~(頻繁に割引有) – 年間更新費約3~4万円 |
翻訳メモリ、用語管理、機械翻訳統合、高度なQAチェック等。 50種以上のファイル対応 |
機能豊富だがUIは複雑 習熟に時間が必要 |
Windows (Macは仮想環境で可) |
別製品(Trados Team等)でリアルタイム協働可 Studio単体ではパッケージ受け渡し |
memoQ | – サブスク 約5万円/年 – 永久ライセンス 要問い合わせ |
翻訳メモリ、用語集、LiveDocs、詳しいQA機能、MT連携など 幅広い形式対応 |
高機能でTradosに匹敵 UIはやや複雑 |
Windows (Macは仮想環境で可) |
サーバー/クラウド経由で リアルタイム共同作業が可能 |
Phrase TMS (旧Memsource) |
– サブスク制(個人$27/月~、チーム$135/月~等) – 無料トライアルあり |
クラウドベースのTMS。 翻訳メモリ、用語集、AI翻訳、QA機能 多様なファイル対応 |
UIはシンプルで分かりやすい 学習コスト低め |
Webベース (Win/Mac/Linux問わず) デスクトップ版もあり |
リアルタイム共同編集◎ 権限管理やチームワーク機能充実 |
Smartcat | – 無料プランあり – エンタープライズ向け有料オプション |
翻訳エディタ+プロジェクト管理+ 翻訳者マーケット統合 50+形式対応、MT連携 |
UIが直感的。 初心者でも使いやすい |
Webベース (Win/Mac/Linux問わず) |
リアルタイム更新◎ 翻訳者招待や支払い管理まで一括 |
Wordfast (Pro / Anywhere) |
– 買い切り 約$480~ – Anywhere 月$10~ |
翻訳メモリ、用語管理、QAチェック。 Pro: 多彩な形式対応 / Classic: Word特化 |
Proはシンプル ClassicはWord画面で直感的 習得しやすい |
Pro: Win/Mac/Linux Classic: Word必須 Anywhere: Webベース |
AnywhereでTM共有可 リアルタイム同時編集は限定的 |
OmegaT | 完全無料・オープンソース | 基本的な翻訳メモリ&用語集、機械翻訳プラグイン。 30+形式対応 |
UIは地味で必要最低限。 動作は軽く安定している |
Win/Mac/Linux (Javaベース) |
リアルタイム協働機能なし 手動でメモリを共有する運用 |
3. CATツールごとの特徴
Trados Studio
- 特徴:業界標準ツールでシェアが高い。多くの翻訳会社・クライアントがTrados形式を前提にしていることも多い。
- 強み:充実した翻訳メモリ機能やQA機能、豊富なファイル対応でどんな案件にも対応しやすい。
- 注意点:ソフトが高機能ゆえ学習コストは高め。Windows環境が必須(Macは仮想環境が必要)。
memoQ
- 特徴:Tradosと並ぶプロ向けCATツール。サーバー環境を用いたリアルタイムコラボに強い。
- 強み:LiveDocsという対訳アライン機能や高性能QAチェックなど、翻訳効率を上げる独自機能が多数。
- 注意点:やや価格は高めで、Windows専用。操作は慣れが必要。
Phrase TMS(旧Memsource)
- 特徴:最初からクラウドベースで設計された翻訳管理システム(TMS)。AI機能も積極的に活用。
- 強み:ブラウザからすぐ使えて、OSを選ばない。複数ユーザーが同時編集できるプロジェクト管理が便利。
- 注意点:月額制。個人利用だと$27/月程度からだが、機能が本格的になるともう少し上のプランが必要。
Smartcat
- 特徴:基本無料で使えるクラウド型CATツール&プロジェクト管理プラットフォーム。
- 強み:翻訳エディタ、用語集、機械翻訳連携を一通り備えつつ、プロジェクト管理・支払い管理なども可能。
- 注意点:エンタープライズ向けの高度機能は別途有料。無料版でも十分多機能だが、サポート体制は有料プランほどではない。
Wordfast
- 特徴:Pro(デスクトップアプリ)、Classic(Wordマクロ)、Anywhere(クラウド)の3形態がある。
- 強み:Tradosよりリーズナブルで、UIも簡単。Wordfast ClassicならWord上でそのまま操作できる。
- 注意点:Trados・memoQほど機能は豊富ではない。Anywhereは安価だが、リアルタイムコラボは限定的。
OmegaT
- 特徴:オープンソース&完全無料。必要最低限の機能だけ揃えた軽量CATツール。
- 強み:無償ながら翻訳メモリや基本的な用語管理など、実用性は十分。動作も軽快。
- 注意点:高度なQAや共同作業機能は標準搭載していない。サポートはユーザーフォーラム中心。
4. 用途や予算に合わせたおすすめ選び方
実際に「どのツールを導入すればいいか?」というと、目的や予算、翻訳スタイルによって優先度が変わります。以下にシチュエーション別のおすすめを挙げてみます。
1. 業界標準で幅広い案件に対応したい
- Trados Studio
翻訳会社での導入実績が非常に多く、Tradosパッケージでのやり取りを求めるクライアントも少なくありません。使用実績をアピールしやすいのも利点です。 - memoQ
Tradosに負けない高機能と柔軟性を持ち、リアルタイムコラボが必要な大規模プロジェクトにも強いです。
2. クラウドで効率化・チームコラボをしたい
- Phrase TMS(旧Memsource)
翻訳管理(TMS)機能とAIを組み合わせ、大人数が同時に翻訳・レビュー可能。企業や翻訳エージェンシーでの採用が増えています。 - Smartcat
無料版からスタートでき、プロジェクト管理や翻訳者マーケット機能もあるため、フリーランス同士のコラボや小規模案件に最適です。
3. コストを抑えつつ基礎から始めたい
- OmegaT
完全無料で手軽に始められるので、まずはCATツールに慣れたい方にピッタリ。翻訳メモリの基本を学ぶ教材としても優秀です。 - Wordfast
比較的手頃な買い切りライセンスで、Pro・Classic・Anywhereと使い方を選べるのが魅力。ClassicはWordユーザーにとても親しみやすいです。
5. まとめ – 自分に合ったCATツールを活用しよう
産業翻訳では、翻訳メモリによる再利用や用語管理、さらに共同作業機能などが、作業効率と品質を大きく左右します。ツール選びの際は、以下のポイントを押さえるとスムーズです。
- 対応案件:翻訳会社との取引が多いならTradosやmemoQ、クラウド前提のチーム翻訳ならPhrase TMSやSmartcatなど。
- 価格帯:買い切り型かサブスク型か、無料版の有無など予算に合わせて選択。
- OS環境:Windows・Mac・Linux、あるいはブラウザ(Webベース)対応かどうか。
- 操作性:UIがシンプルか、習得に時間がかかりそうか。
- コラボレーション:プロジェクト管理やリアルタイム同時編集が必要か。
CATツールは一度使い始めると、過去の翻訳資産がどんどん蓄積されて翻訳効率が飛躍的にアップします。最初の導入には費用や学習コストがかかるかもしれませんが、長期的には大きな時短効果が期待できます。
ぜひ、自分の翻訳スタイルに合ったCATツールを取り入れて、産業翻訳の作業をさらに快適&スピーディにしてみてくださいね。
以上、産業翻訳に役立つCATツール比較とおすすめをお届けしました。気になるツールがあれば、トライアル版や無料プランなどで実際の使い勝手を試してみるのがおすすめです。あなたの翻訳ライフがより充実したものになりますように!